2011年11月11日

全熱交に対する過信 (生活体験1)


今から4年ぐらい前のことだったと思う。
名古屋地域で自動車関連企業に勤めているTさんから、自宅を建てるにあたって「名古屋での夏期の除加湿の必要性」を示すグラフを送って頂いた。

名古屋での除加湿量.pdf

図の中の真っ赤な線が必要除加湿量。
この図を見て、「顕熱交ではダメ。日本の夏期は潜熱が多い。つまり全熱交でエンタルピを処理しなければならない」と言っていたプロの言葉が浮かんできた。
聞きかじりの生半可な知識しか持っていない者の哀しさ。その言葉に靡いてしまった。

それまでは、カナダの技術屋さんが総力を上げてまとめた「R-2000住宅の教え」に従って、もっぱら顕熱交を採用してきた。
ダーディゾーンから24時間排気することで、確かに室内の空気質が清潔に保たれる。
排気は、トイレは20m3が2ヶ所で40m3。 浴室が40〜50m3。 台所が40〜50m3とすると、これだけで130m3。
40坪の住宅の必要換気量は約165m3。とすると残りの35m3の排気はシューズルーム、ウォークインクロゼット、あるいは犬や猫のトイレ室に当てた。
私は、この排気計画は今でも正しいと確信している。
というのは、カナダのこの計画を上回るだけの研究や理論が発表されていない。もし、カナダ以上の優れた排気システムに対する提案があれば、いつでも採用し、皆さんに積極的に推奨してゆきたいと考えています。

そんな時、一条工務店の仕様書発注で、ダイキンが全熱交で熱回収率90%の「ロスガード90」を開発した。一条はどこまでも換気システムとしてこれを採用。各室への分岐装置を自社開発し、100φのダクトも自分の手で用意していた。ただ、浴室などは24時間排気ではなく局所間欠運転。これだとどうしても換気計画は絵に書いたようにはならない。ただ、一条は浴室、トイレ、廊下に至るまで全て床暖房しており、24時間排気がなくても冬期にヒートショック問題を起こす心配はない。
私は一条の換気システムには魅力を感じなかった。カナダの原則を守っていないから・・・。
ただ、ダイキンの90%熱回収出来る全熱交 (ダイキンではベンティエールと呼称) の実力を試してみたかった。
そこで、ダイキンから一条へ話をつけてもらい、どこまでも「セントラル空調換気システム」の一貫としてこの全熱交を採用し、その実績データは一条にも公開するという条件で3台ばかり提供してもらった。

全熱交の採用では、問題なる大きな点が2つあった。
1つは全熱交のエレメント。これは和紙系統で、浴室などから排気される湿度には弱いという懸念。このため、工場の技術屋さんはガンとして反対する。
たしかに浴室の排気をそのままダイレクトにエレメントに送ると問題が起こる可能性がある。
しかし、浴室からの排気は40m3。全体の165m3の排気の24%に過ぎない。全部の排気量を混ぜてエレメントへ送れば、工場での机上計算で心配していることは避けられるのではないか。
しかも、24時間連続機械運転が建築基準法で義務付けられている。一時的にエレメントに湿気が当たっても、直ぐ乾いて問題を起こすことはほとんど考えられないのでは・・・。

もう1つは、潜熱まで交換するので匂いや細菌が導入される新鮮空気に移転する怖れ。
これについては、ダイキンエアテクノ東京からの提案で、熱交換に入る直前の戻りダクトの中に光触媒を介入させた。
この結果、設置してから丸3年以上経過しているが、セントラル空調換気システムにあっては、カナダの給排気計画に基づいて光触媒を介入させた全熱交システムは、見事に機能している。
一番問題だった匂いについては、全く問題がない。
ダイキンには、「匂いのソムリエ」 が4人いる。
しかし、ソムリエを煩わすほどのクレームは一度も発生していない。匂いの移転がない以上は、細菌の移転についても心配がないということ。
また、エレメントの状態も現時点では問題がない。これがどこまで続くかは経験値がないので確言は出来ないが、あまり心配することはないらしい。

そして、2008年の2月19日に名古屋のTさんをS邸に案内している。
そして、Tさんは08年3月10日付の「住まい心地 2」で貴重な意見を寄せている。
そのことを、すっかり失念していた。
読み返してみて、冬期のS邸に対するTさんの理解力の深さに改めて感動した。
S邸の住まい心地について、私は完全に傍観していたわけではなかった。
ただ、それ以降に起こった問題に対するホローがなかった。
そのいくつかを、「生活体験」 という形で、数回に分けて記載したい。

最初に起こった大問題は 夏期の除湿。
今までの記述で、顕熱交から全熱交への転換は、条件設定さえ間違わない限り可能だとうことが分かってきた。
しかし、「全熱交にすると夏期の除湿処理がうまくゆくのではないか」 という期待はものの見事に裏切られた。
冬期は全熱交にしたことで若干効果があるが、夏期は全くと言ってよいほど効果がないことが分かってきた。
必要なことは、夏の顕熱の熱交換ではない。 湿度の排出 !!
つまり、室内の湿度を如何に外部に排出し、室内の湿度を低くするかが問題。

夏期の除湿には全熱交はほとんど役に立たないことが、S邸でもY.S邸でも判明した。
具体的には、室内の設定温度を25℃にしないと湿度が多すぎて快適ではない。
何度も指摘していることだが、人々は温度が26℃を突破した時点で、初めて湿度の存在を感じる。 
蒸し暑さを感じる。
相対湿度が問題になるのは、室温が26℃を超えた時。したがって、相対湿度を感じなくさせるには室温を25℃に設定しなくてはならない。S邸でもY.S邸でも、こんな状態で全熱交の最初の夏を迎えてしまった。
当然のこととして冷房運転時間が長くなるし、全体に冷え過ぎて不快で身体によくない。
特に女性にとっては25℃の温度は、快適どころか苦痛。
S邸では、当初の除加湿システムでの快適さを実感していたから、我慢の限界を超えるものだった。

全熱交の夏期の潜熱の熱交換機能を過信した天罰が下された。
全熱交だから、排熱ドライ機能を持った空調機は不要と考えていた私とダイキンエアテクノと専門工事業者の脇の甘さ。
これはとんでもない間違い。
だが、新しいことにトライする度に起こるトライ&エラーの1つとして許してもらうしかない。
このため、2008年の8月には、S邸、Y.S邸とも空調機をアメニティビルトインに交換する作業を急遽行った。
そして、やっと27℃での生活が得られた。
しかし、28℃以上での快適生活は、全熱交換機では得られていない。

私が、「全熱交よ さようなら」 と叫んだのは、この夏期の失敗からの猛反省の言葉。
冬期に関しては、全熱交はそれなりの効果がある。
しかし、トイレや浴室からの24時間排気をしない全熱交は、実質的な熱回収率は低く、換気計画がメチャクチャ。
これなら、顕熱交の方がはるかに優れていると、現時点で断言したい。


posted by x-unoblog at 13:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 生活体験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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