2007年05月31日

そして契約 (計画11)


Sさんご夫妻は、昨年の9月から12月までの間に、10回以上高崎へ足を運んでいる。
まず間取りを決め、それから一つ一つ仕様を決めてゆく。
仕様が決まらない限り見積もりは出来ない。

企画住宅で、基本的な標準仕様が決まっている場合は、比較的簡単な打ち合わせで見積もりに入ることが出来る。しかし、クロスやカーテンの色柄から照明までを含めると、最低でも7、8回の打ち合わせが欠かせない。

この打ち合わせの時間を省くことこそ最大の合理化だという考えがある。
自動車を選ぶ時のように、限られた仕様の中から選べば良いではないか…。
分譲とかマンションの場合はそれでも良い。
また、ローコスト住宅の場合は、いちいち施主のわがままを聞いてはおれない。
「この価格ですから、この仕様の範囲から選んで下さい」ということになる。
ローコストで自在な注文住宅というのは、あり得ない。
耐震性を無視すれば、間取りの自在さはある。
しかし、仕様と性能の自在さをローコストに求めることは無理。

プレハブ住宅は、基本的な構造駆体が決まっている。
したがって、建て方はいたって早い。
しかし、内部の造作工事に入ると手間暇がかかっている。
つまり、施主の細かい注文を受け付けると、打ち合わせに時間がかかり、同時に工事に時間がかかり、コスト高になる。
多くの消費者は、それを承知でプレハブを選んでいる。
安いからでも、工期が短いからでもない。
カスタムハウスというのは、そういうもの。
注文住宅とは施主のこだわりと満足度を最優先させ、長期に亘って担保する最高額の商品。
満足度をより完全なものにするため、打ち合わせにかける時間は必要悪。
安藤忠雄氏に代表される自意識過剰なプランナー。
彼等は、プランナーの自己満足度を最優先することこそが創造的で、芸術的で、素晴らしいことだと押し売り論理でうそぶく。見事なまでの錯誤。

昨年の暮れも押し詰まった28日、見積もりの提出があった。
この見積書には画期的な提案があった。
国産でK値が1.2WのPVCサッシと、ダイキンの熱回収率の高い空調換気システムが、本邦で初採用されていた。
そして、価格はビルダーの配慮で、メーカーの協賛価格がそのまま提示されていた。

基礎や構造駆体は、その性能値に比べてかなり勉強した数字が並んでいた。
しかし、打ち合わせに参加していないので仕上げや機器類の仕様内容が理解出来ない。
つまり契約書を読み切ることが出来ない。単価を見ればかなり高い。
「高いものを選びましたね」としか言いようがない。
プランナーのIさんからは「契約の後で追加工事が膨らむのが一般的ですが、Sさんの場合は最高級の仕様で選んでいますから、後は引き算で考えていただけます」との発言。
情けない話だが、その言葉を信じる以外に判定方法が見当たらない。

「先行き資材価格の高騰が見込まれています。いいです。これで今日契約いたします」
Sさんの決意で、パッシブハウス東京第1号のGOが決まった。
しかし、断熱などの細部仕様は、あくまで暫定仕様のままで…。
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2007年05月29日

女性プランナー (計画10)


昨年の9月から12月までの4ヶ月間、双方で徹底した詰めの作業が行われた。
その間、一度も立ち会う必要がなかった。
途中で一度だけ、双方をダイキンエアテクノへ案内して、新しい空調換気設備の細部についてレクチャーを一緒に受けただけ…。

いきなり、私の提案していた基本プランがIさんの手により根本的に訂正された。
私のプランは施主の希望を最大限に尊重して、同居する両親の部屋を東南の一番良い場所に配置し、キッチンとダイニングを西側に配していた。
ところがIさんは主婦感覚で、キッチンとダイニングは朝日の当たる東側へ絶対に持ってくるべきだと主張し、両親の部屋と入れ替えた。
そして、ほんの僅かだが全体面積を小さくして、コンパクトに施主の希望を集約した。

このIさんの提案に、ご夫妻も私も新鮮な驚きで賛同した。
住宅の性能とか機能に関しては、男性のプランナーが優れている。
理屈とかハードは男の世界。
しかし、実際の間取りとか使い勝手、インテリアなど情緒に関するソフトの部分では、どんなに力んでも男性は、とくに子育てを終えたベテラン女性プランナーには叶わない。
生活体験の乏しい若い男性設計士などは、ベテラン主婦をうならす提案は絶対と言って良いほど出来ない。

親元にパラサイトしていて、食事を作ったことも、後片付けをしたこともない。
洗濯や掃除も母親任せ。結婚しても家事は一切奥さん任せ。
赤ん坊のむずかりやおしめの取り替え。幼児の心配事やケガ。
小学生や中学生時代の子供の勉強のチェックとPTA仲間との付き合い。
急に来訪する主人の会社の仲間や部下へのもてなしと片付け。
ハレの日のムードづくりとお手製のお菓子づくり。
家庭で毎日繰り広げられるこうした作業や行事に対して、男は積極的に関わっていない。だからわかりっこない。

日本の住宅業界で、ベテランの女性をインテリアコーデネィターとして積極的に採用し、女性に才能を伸ばすチャンスと働く場を提供したのが三井ホームの生みの親であった岡田徳太郎元副社長であった。
それまでの住宅は、味もそっけもない単なる箱。
プレハブに代表されるメーカー側の一方的な押しつけによる規格品。
それを、ベテラン女性の繊細なセンスで「住まい」に変えたのが初期の三井ホーム。
三井ホームはツーバィフォーで伸びたのではない。
外観のデザインと「ベテラン女性の活用」というイノベーションによって急成長した。
しかしその後は、三井不動産から順送りに派遣されてくるセンスのない男役員様方々のご尽力で、立派に停滞を続けている。

そして、三井ホームに変わってベテラン女性を優遇して成長を見せてきたのがスウェーデンハウス。建築科の学生の中では、男性よりも女性の方にすぐれた人材が揃っており、成績も良いというのが最近のもっぱらの評判。

地場ビルダーの不振の大きな原因の一つが、ベテラン女性プランナーを使いこなしていないとこにある。
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2007年05月27日

お見合い (計画9)


ビルダーにとって、新しい課題を与えてくれる施主は「福の神」。
私が関東地域でいち早く高気密住宅に取り組めたのは「花粉症のない家が出来ないだろうか」という花粉症患者の物理の先生が、20年前に難課題を与えてくれたから…。

マイスターハウスが大躍進したのも同じく20年前に、歯科医師会の大御所が「メンテナンスの要らない家が出来ないか。気に入ったらカネを払う。気に入らなければカネは払わない。自信があるなら請負契約も前渡金も無しでやってみろ」と無理難題を突きつけてくれたから…。この課題に山口社長は燃えた。
そして今では「住宅設備機器を含めた全てを10年間は無料で保証します」というメンテ不要を打ち出し、医療や教育関係者をはじめ地場の絶対的な信頼を得ている。
前橋住宅展示場のモデルハウスは築18年と、信じられないくらい古い。日本一古い。しかし、無垢の内装材は未だに高い鮮度と精度を保っている。
施主の難課題を克服したとき、企業は飛躍する。

『メンテが不要で、壁断熱厚が200mm以内で、暖房費が限りなく不要な家』
この新しい課題が、山口社長の好奇心を刺激した。

しかし、請負契約は恋愛関係と酷似している。
相性という垣根がある。
どんなに美男子で、気が優しくて、力持ちで高収入があったにしても、必ずしも全ての女性のハートをくすぐるとは限らない。
ちょいと目はがさつで、お世辞にも美人といえない女性が、意外と年下の男の子に人気があったりする。

合縁奇縁。請負契約書は婚姻届。
婚姻届の場合は、後日離婚届で解消することが可能。
だが、請負契約書は後で気に入らないから離婚というわけにはゆかない。
それと、請負契約には「契約金額」というハードルがある。
どんなに相思相愛になろうとも、請負金額で折り合いがつかないと契約には到らない。
山口社長がその気になっても、片想いで「縁がなかった」ということもありうる。

とりあえず、お見合いが始まった。
最初はSさんご夫妻が群馬を訪れ、工事中や完成現場を山口社長の案内で見てまわった。
現場が綺麗に整頓されているのと丁寧な仕事ぶりにご夫妻は感動した。赤城山麓の蕎麦屋で、揚げたての天ぷらに舌鼓を打ちながらその想いを伝えた。
別の日には、1年前に完成した東京郊外の住宅を訪れ、施主から本音の感想と体験談を聞いた。

そして次は、山口社長と設計のIさんが環8の内側にある建築予定現場を訪れ、その足を伸ばして築8年の千葉のR2000住宅を訪ねた。
自分の意志で建てた住宅を見ると、ご夫妻のこだわりと、人柄と、ポリシーが手に取るようにわかる。

この相互訪問のお見合いで、押しかけ仲人の役割はとりあえず一段落した。
あとは双方で、徹底的に詰めてもらうしかない。
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2007年05月25日

山口社長への下相談 (計画8)

東京で、ほぼ無暖房で生活出来る住宅とは?
Q値は一体どれぐらいであれば達成可能なのだろうか…。

そして、無暖房と言っても「政府の唱える無暖房」と「実生活での無暖房」では違う。
政府は、省エネのために室温設定は「冬期は18℃、夏期は28℃にしましょう」と呼びかけている。
このため、私ども住宅関係者の言う年間燃費は、この「政府指定室温」のこと。
年間燃費5万円というのは、冬期18℃、夏期28℃で我慢生活をした場合の話。

しかし、夏期に冷房温度を28℃に設定している職場や家庭がどれだけあるか!?
高温多湿の日本で、相対湿度を無視して温度設定をすることほど非科学的なことはない。
28℃の室温を求めるのなら相対湿度を50%にしないと仕事の能率は上がらず、家庭では身体を休めることが出来ない。
何度も強調してきていることだが、室温が26℃であるためには相対湿度は60%でなければならない。27℃だと55%、28℃だと50%、29℃だと45%。そして30℃であっても相対湿度が40%であれば誰もが「涼しくて快適」と感じる。
この基本原則を無視した議論は、まさに机上の空論。
除湿機能付きのR2000住宅で、夏期は27℃の設定が圧倒的に多かった。

そして、R2000住宅で冬期に室温を18℃に設定している家庭は、私の知っている範囲では5軒しかなかった。2.5%という低い比率。
セーターを着ておれば室内に温度差がないので18℃で十分に暖かく生活出来るという。
しかし、これを次世代省エネクラスの家庭に求めるのは、どだい無理な相談。
R2000住宅でも、20℃〜23℃での生活が圧倒的に多かった。

こういった諸条件を考えて、『東京でパッシブハウスという場合、消費者が求める最低の条件は夏期の室温が28℃で相対湿度が50%であること。冬期はガラス面でのコールドドラフト現象が起こらず室温が20℃であること』ではなかろうか。
これはあくまでも仮説。
しかし、仮説でもいいから条件設定をしないと前へ進めない。

この条件で、年間暖房費をほぼ無償にする……年に数回だけ、室温が20℃を切った時だけ補助暖房が稼働する……という住宅の熱損失係数、つまりQ値は一体どれくらいを想定したら良いのだろうか。
誰に相談してもまともな返事が返ってこない。シミュレーションソフトにはそれほど高い信頼を寄せることが出来ない。
そこで、とりあえずQ値は0.8W/m2以下にすべきだろうと、これまた仮説を立てた。

そして、山口社長に下相談をした。
「とりあえず、S邸のQ値は0.8W以下を目的にしたい。そのための条件の一つである熱交換機についてはなんとか手がかりは得られた。しかし、サッシとか床・壁・天井の断熱性能については価格問題もあって仕様が決められない。とくにサッシに関しては資料は揃えたが決め手に欠ける。だが、限りなく無暖房に近い住宅が比較的手頃な価格で得られるような気がする。群馬でいきなりパネルラジエーターのないモデルを建てるのは冒険だが、東京だと思い切って実験が出来る。Sさんご夫妻は社長の眼鏡にかなうはず。一つ利益を度外視して、実験棟としてS邸を捉えてもらえないだろうか」と。
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2007年05月23日

無暖房ということ (計画7)

北ヨーロッパ 017.jpg
リンドース村のタウンハウスは雪の中でも無暖房で暖かく住民の生活を守っていた。しかし、2001年のこのプロジェクト以来、新しいプロジェクトはない。その理由は地域暖房給湯システムが普及しているからだろうと推測した。


一昨年、スウェーデンのハンスさんが日本全国で「無暖房住宅」を説いて回った。
仙台での講演にはマイスターの4人の技術者と一緒に私も参加した。
ヨーティボリの郊外、雪のリンドース村のタウンハウスを昨年訪れた。
ハンスさんの言う無暖房住宅とは「暖房設備に投じる費用を、換気とサッシと、より高断熱に投資し、ランニングコストをタダにする」というもの。
「無暖房」が目的ではない。
カネさえかければ無暖房住宅は誰にでも作れる。
そうではなく「暖房設備への投資額の範囲内で無暖房を達成する」ことが目的。

北海道は暖房設備だけでよい。
全館パネルヒーテングのために140万円の設備費がかかっていたとする。
その140万円を換気、サッシ、壁・天井の断熱厚に投資する。
そうすれば、あとは灯油が一滴もなくて暖かい生活をしてゆけるのが無暖房住宅。

V地域では暖房設備とクーラーとの二重投資が不可欠。
全館暖房とするには、パネルヒーテングにしても床暖房にしても札幌と同様に140万円の暖房設備費がかかるとする。
その140万円のうち20万円を換気に投資して、第3種換気システムから90%の熱回収を果たしてくれる1種の熱交換型換気システムに変える。
さらに70万円を余分に投資してK値が1.7Wのサッシを1.2Wのサッシに変更する。
残った50万円を天井と壁の断熱に投資する。
これで、暖房設備が無くてもほぼ快適な生活が送れるかどうか…。
北海道では難しいにしても、
仙台や群馬などのV地域では可能のように思える…。

それと、V地域ではどうしてもクーラーが必要。
真夏の温度が東京よりも高くなる内陸の群馬にあっては各室にクーラーが不可欠。
マイスターハウスは、冬の快適暖房を主体に考えてパネルヒーターを採用しており、冷房は壁掛けなど個別機器で対応している。
セントラルシステムではない。
したがって、入居者の声を聞いても冷房の快適性に不満が残っている。
どうしても痛い「風」を感じるから…。

ハンスさんは暖房設備を撤去したので10年に1度という例外的な極寒時のことを考え、必要以上に壁を厚くしている。
しかし、V地域ではクーラーが設置されている。
これを冷専ではなく冷暖用に変えれば、年に1度か2度の特別に冷え込んだ朝の補助暖房として使える。
したがってハンスさんのように壁厚を400mmにする必要はない。
どの程度の設備で、ほぼ無暖房が可能なのかという限界値を知りたい。

もし、暖房設備が不要ということであれば…、つまり空調の補助暖房で暖かさが十分に確保出来るということであれば、意識を根本的に切り替えねばならない。
暖房ではなく「冷房を中心としたシステムに置き換える」と。
地球の温暖化で、これからますます平均温度が高くなってゆくのだから…。
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2007年05月21日

本当の暖かさ (計画6)

IMG_4266-3.jpg
北ヨーロッパでは排熱を利用しての地域給湯が盛ん。
新開発地域では各戸にお湯が供給される。それを使って窓の下にはパネルヒーターが設置される。この高層住宅は超高気密高断熱住宅でQ値は非常に高かったが、無暖房を選択してはいない。



大課題だった新しい換気に対する手がかりは、何とか得られた。
次は暖房と冷房。

温暖地の日本では、寒さは「我慢するもの」であった。
戦前戦後はらくだの股引と足袋を穿き、ドテラを着、襟巻きをして火鉢かコタツ、あるいは囲炉裏で暖をとった。
数寄屋造の名建築といえども、冬期は隙間だらけで室内外の温度差はなし。
東京オリンピックを境に1965年以降、アルミサッシと石油ストーブが急速に普及し、室内外の温度差は拡大。と同時に結露問題が幾何級数的に増大。
しかし、暖房はどこまでも局地的、間欠的なもので、「我慢するもの」という基本は変わっていない。

これに対して寒冷地の北欧、北米、ロシア、モンゴルなどでは全館暖房が大前提。
極寒地の屋外ではプラスチック類は組成が破壊されて使い物にならない。このため純毛と純綿しか身にまとっていない。だが一歩家の中に入れば純綿の薄着だけで生活している。極寒に耐える身体を作るには、家の中は暖かくなければならない。家の中が暖かく、血の巡りが良くて行動的だから、屋外の極寒に耐えられる。
住宅の絶対的な条件は「冬は暖かい」こと。
日本のように寒さを我慢することが美徳であり、古い旅館で震えながら燗酒を交わし、風呂場で脳卒中で倒れることを風流視する文化は、世界にない。

つまり、北海道などの寒冷地を除いて、関東以西の日本では未だに「全館暖房」というコンセプトの意義と重要さが理解されていない。
全館暖房はCO2削減運動に反するもので、大変に「もったいない」反地球的な行為だと信じている日本人が、未だに80%にも及んでいるのではなかろうか…。
工夫すれば、全館暖房をしても燃費はほとんどかからないという事実を知らない。
そして、本当の「暖かさ」も知らない。

日本人の知っている暖かさは、周辺が寒いから手をかざし、顔や背中を熱源に向けて直に採るものだった。焚き火、火鉢、囲炉裏、コタツ、石油ストーブがそうだった。
空調機による暖房も、温風が直に当たらないと暖かくなかった。
家の中には3つの温度差が…。
部屋の天井と床の温度差。朝、昼、夜の時間差。居間と廊下と寝室などの居室差。

断熱性を良くし、気密性を高めると3つの温度差をなくすることが出来る。
そうすれば、直に火に手をかざして暖をとる必要はなくなる。
そして、北欧を中心に広く採用されているのが温水のパネルラジエーターによる輻射暖房。温度差がある時は床暖房が有効であった。しかし温度差がなくなったら、コントロールの難しい床暖房が見捨てられ、パネルラジエーターに変わった。
日本で床暖房が未だに重宝されているのは住宅の断熱・気密性能が悪く、部屋の上下に温度差があるという立派な証拠。

日本でもT地域、U地域だけでなく、最近ではV地域でもこのパネルラジエーターを採用している良心的なビルダーと先進的な消費者が増加している。
この輻射暖房の、ソフトな温かさを体験したほとんどの消費者は、他の暖房に戻ることが出来ない。Uターン禁止の世界。


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2007年05月19日

ダクトの経年変化調査 (計画5)

RIMG1044.JPG


まだ基本プランをこねまわしている時に、ダイキンより電話が入った。
新商品の企画で「ちょっと智慧を拝借したい」と。
具体的には、セントラル空調換気システムのダクトの実態調査。
「住宅用のダクトの中は大変に汚れており危険。結露したりカビが生えたりで住めたものではないという固定観念と意見が住宅業界に根を張っている。それが事実かどうか、築8年以上の経年変化した住宅での、徹底したダクト調査を行いたい」

渡りに舟とS邸を紹介。
調査の当日は、ダイキンから3人の技術屋さんがS邸を訪れ、施工を担当したO社の社長にも立ち会ってもらった。
ダクト内のゴミと細菌の採取は数ヶ所におよんだ。
●新鮮外気の採り入れダクト
●熱交換機からの各室への給気ダクト
●廊下からのリターン空気ダクト
●台所、浴室などからの排気ダクト
●室外への排気ダクト

この中で、もっとも注目されるのが熱交換機から各室へ新鮮な空気が供給される給気ダクトの中。本当に汚れていて危険かどうか?
私は、それまでに何回となくこの給気ダクトの中を覗いている。
現役時代に、無理難題を言ってダイキンの技術部長と課長に交代で土日に同行してもらい、半年以上かけて200戸全ての住宅の空調換気設備を調査して回った。
フィルターのメンテナンス状態やエレメントの汚れ具合、除加湿機器の状態、各種ダクトの汚れ具合など…。したがって自信があった。
「給気ダクトは絶対に汚れていない。新品同様である」と。

給気ダクトが汚れている現場があるとしたら、新鮮外気の採り入れ側・リターン側・排気側のフィルターが汚染しているか、システムそのものに問題があるか、あるいは施工ミスによるものであろう。
もし、全てのダクト工事に問題があれば、高層オフィスビルや病院、デパートは使いものにならず、高級ホテルには宿泊出来ないことになる。

(財)日本食品分析センターで行われた培養試験報告書が1ヶ月半後にとどいた。
採取したダクトの内面を密封して持ち込み、25℃で7日間、PDA、DRBC、M40Yという培地で培養したが「検出されたカビ(属)Cladosporium sp, Aureobasidium sp, Alternaria sp, Chaetommium sp, Botrytis spとも特徴的形態が見られなかったため同定不能であった」との報告。早い話が綺麗すぎるほど綺麗だったということ。

ダクトの綺麗さの証明もさることながら、それ以上の大きな収穫があった。
このダクト調査は、新しい換気装置の開発を前提に行われたものであったということ。
熱回収率が90%以上という、願ってもない開発のためになされた調査。
直ぐその場で、3棟分の試験的な採用を申し込んだ。
無理を承知の上で、何が何でも…と。
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2007年05月17日

3つの選択肢 (計画4)



S邸の基本計画はまとまった。
そこで、施主のSさんの立場に立って、誰に依頼したら良いかを真剣に考えた。
考え抜いた末の選択肢は3つ。

一番簡単な選択肢は、私がもっとも信頼している群馬のマイスターハウスが引き受けてくれること。
しかし、同社は群馬で手一杯に仕事を抱えており、わざわざ東京まで出てこなければならない理由は1つもない。地場ビルダーに徹しているから、東京で名前が売れても嬉しくもなければおかしくもない。
目が回るほど忙しいのに、余分な苦労を背負いこむ必要がどこにある…。

ただし、期待出来る細いツナが一本だけあるはず。
それは、S邸をマイスターハウスの近未来の「実験棟」として位置づけること。
Sさんにモルモットになってもらって、考えられるいくつかの実験を平行して行う。
そして、空調機器メーカーなどの協力を得て徹底したデーター取りをする。
幸い、Sさんはいの一番にR-2000住宅に飛びついたご夫妻。
イノベーションに対する理解力は高い。
実験棟と呼ぶにふさわしく、社会的に認知されるだけの価値のある内容が用意出来るかどうか…。
そしてマイスターハウス山口社長の、人一倍強い好奇心を刺激してその気にさせることが出来るかどうか…。

もしマイスターハウスがダメであれば、第2案として、設計は千葉のS邸を担当したY氏に依頼し、インテリアコーデネィターはベテランのNさんを起用し、工事はOビルダーに頼むしかなかろう。
ただし、この場合O社の工事力はマイスターに比べるとかなり落差があるので、知り合いの大工さんを動員し、私自身が現場に張り付いて、徹底的にチェックをしなければならないだろう。
そこまでやれば性能担保は可能。

3つは、若手設計のA君を起用する。この場合もインテリアコーデネィターはベテランのNさん。そして監督はB君で工事はC社。
この場合も、私が現場に張り付いて、施主の目でチェックを続けるという条件は避けられまい。
しんどいけど、最悪の場合はそれしかない。

2案と3案は、施主の希望どおりにS邸を完成させることは出来る。
しかし、そこには新しいトライがない。
好奇心を満たしてくれる面白さに欠ける。
やはり、何としてもマイスターハウスの山口社長を口説き落とし、イノベーションにチャレンジしてもらうしかない。

Sさんと一緒に、ダメもとで当たってみようということになった。
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2007年05月15日

厳しい区の緑化計画 (計画3)


ハーティホーム時代、私は商品開発の仕事の以外に、上石神井展示場の売上げの責任を負わされていた。
営業マンを置かず、3人の設計士が最初から接客するシステム。
彼等の営業活動を支援するため、いち早くホームページを充実させ、当時のビルダーではダントツのアクセス数を記録した。
3人の設計士それぞれに、ホームページを立ち上げてその実績と人柄をPR。
それと、最初に提案するプランは出来るだけチェックした。
最初のサービスプランで、ほとんど評価が決まるから怖い…。

S邸の場合もご夫妻の希望を聞き、土地購入の前にどのようなプランが可能であるかをシミュレーションした。
区役所へ行き、入念に風致地区条例をチェックした。
そしたら、風致地区条例以上に区の緑化計画の方が厳しいことを知らされた。
接道部緑化率40%とか必要緑化面積の厳しい規定。
数年前までにはなかった基準。
あわてさせられたが、こうした緑化基準が強化されたのは、
望ましい方向だと納得させられもした。
だが、プランの制約条件は想像以上に厳しいものに一変。

私が仕事を横取りしていると恨む設計士がいるかもしれない。
しかし、その心配はご無用。
私が施主のために行っている無料のシミュレーションは、どこまでも最初のラフ計画。
構造図作成とダクト設計は誰よりも多くこなしてきているので、最初から耐震性とダクトの配置を考えてのプランとなる。
それだけが唯一の取り柄。
最近の各種建材や設備機器、電機機器などの開発はめまぐるしい。
SOHOでは、とてもじゃないが全ての新情報をカバーすることが不可能。
それに、細部の部品や色柄までを詰めるには気力と根気が必要。その根気がもうない。
施主がほぼ満足出来る内容が得られた時点で、後は設計士とインテリアコーデネィターにお任せ。

S邸の場合、小屋裏3階利用、2階建て、一部地下利用など数プランを提案。
その中から1つを選び、何度も手を加えアイディアを出し合って、なんとかご夫妻のこだわりに近いものが出来上がったのが9月の声を聞く頃。
高額な宅地の購入がなされた。

さて、このプランの仕上げと施工を誰に任せたらよいか。
ハーティホームが存在していたら、設計士とインテリアコーデネィターと監督と大工さんを指定して任せることが出来た。
しかし残念ながら存在していない。
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2007年05月13日

不動産屋のラフプラン(計画2)


次の週、Sさんと購入予定地の現場で落ち合った。
「今の住宅には大変満足しています。しかし近い将来、どちらかの両親を引き取ることを考えねばならなくなり…」
つまり、今の住宅は両親のことまで考えていなかった。
両親が居住出来るスペースがない。増築も難しい。
それだけではない。もし、同居となった場合、車でしか動けない田舎は、
両親にとっては大変に不便。
バスとか電車で自由に動ける都心の方がよい。
「そんなわけで探していたら、偶然この土地が見つかったのです」

Sさんの説明を聞いて「ホッ」とした。
R-2000住宅に欠陥とか問題があったわけではない。
「私はね、原さんが心血を注いで建ててくれたわが家に、大きな愛着と誇りを持っています。一生住むつもりだったのですが…」
原さんとは、S邸を担当した工事部長。
惜しくも肺ガンのために40才台の若さで亡くなったが、真っ正直な性格と前向きの姿勢で、多くの施主から絶対的な信頼を得ていた。

Sさんの見付けた土地は、バスの便がよく、私鉄の駅からも歩いて7分程度。
閑静な住宅地で、しかも東と南の2方向が道路。
ほれぼれとさせられる敷地。
ただし、Sさんが見付けた土地は、第2種風致地区。
1種住専1種高度なので、将来にわたってマンションなどが建つ心配がない。
その変わりに、隣地境界線から1.5m、道路から2.0m壁面を後退しなければならないなどの大きな制約が。
「不動産屋はこんな絵を書いて、ご希望のスペースは取れると言うのですが…」
それはラフプランと呼べるものではなかった。
片流れの勾配屋根で、小屋裏を使って、なんとかSさんの希望しているスペースを確保しただけのもの。

注文住宅をやっていると必ず出会う仕事がある。
「この土地で、どんなプランと空間とデザインが可能か?」
この仕事は、メーカーやビルダーにとっては顧客へのサービス作業となっている。

消費者は、敷地を購入する前に必ず相談をしてプランを入手すること。
設計事務所が「最初のプランは無料サービス」ということであればお奨め。
しかしそうした看板を掲げ、その通り実行している事務所は少ない。
やはりメーカーとかビルダーの門を叩くということになる。
そして、その無料設計相談で、その会社の技術レベルが分かる。
依頼して良い会社かどうか、その半分が判明する。
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2007年05月11日

Sさんからの電話(計画1)



ちょうど一年前の、5月の中旬のことだった。
何年ぶりかで突然、
Sさんから電話がかかってきた。
「東京の山の手に良い物件が出てきたのです。一度見てくれませんか」
Sさんは9年前に千葉でR-2000住宅を完成させ、
快適に住まわれているはず。

ハーティホームにとっては、Sさんは5〜6番目のお客さん。
ニューヨークでの7年間の駐在中、
Sさんご夫妻は郊外の軽井沢を思わせる美しい住宅地で、
セントラル空調で気密性の良いツーバィフォー住宅の快適さを体感。
ペアガラスが装備されていて断熱性が良く、
冬期でもTシャツで過ごせたとのこと。

日本へ帰ってとりあえず宅地を手当て。
そして、新居を建てるために住宅展示場巡り…。
しかし、セントラル空調でこれはという住宅に遭遇することが出来なかった。
といって、いつまでも躊躇してはおれない。
完全に満足はしていなかったが、一応T社に内定。

その時、寮のポストに目新しい会社のチラシが入ってきた。
読んでみると何から何まで自分の希望にぴったり。
だが、本物かどうか…
早速、週末にご夫妻は上石神井の展示場に足を運んだ。
1997年の年初のことだった。
他社のモデルハウスは玄関ドアが空け放しなのに、
萌黄色のアーリーアメリカン調の玄関ドアは閉められたまま。
その厚い木のドアを開けてびっくり。
空気が軽いというか、澄んでいるというか…
暖かさがとてもソフトで、ホンワカしていた。
そしてご夫妻は、衝動的に「これだ」と決めた。

完成した住宅には、協会による建設大臣認定制度の
「R-2000住宅認定番号 66号」が付いており、ご夫妻は大変に満足されていたはず。
それなのに、新しく土地を探しているとは?
一瞬、意識が固まってしまった。
posted by x-unoblog at 09:53| Comment(1) | TrackBack(0) | 計画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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