2007年08月11日

寿命と対策 (サッシ 4)



非常に大きな問題でありながら、日本では本格的に議論されていない問題がある。
それは、サッシの寿命。

ウッドサッシが主流のヨーロッパでは、いかにアルミで外側をオーバレィしていても、サッシの寿命は数十年と割り切っている。
ガラスも、充填してあるアルゴンやクリプトンガス、遮熱の金属粉のコーティングの性能が、半永久的とは考えていない。

つまり、駆体は百年以上の風雪に耐えられるが、サッシやドアは途中で取り替える必要があると誰もが考えている。
このため、寿命がきたサッシを、外装の仕上げ材を傷めることなく取り替えられるように工夫をこらしている。

高気密高断熱住宅をやってきたビルダーや設計士だったら、1人残らずスウェーデンの超高性能輸入ドアを扱った経験があろう。
このドアは日本製のドア枠のように、外側からすっぽりと駆体にはめ込むというものではない。木製の枠に金属製の枠が一切付いていない。

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したがって、大工さんは部屋内からレザーレベルで取り付ける枠の垂直・水平を点検する。とくに下枠の水平が物を言う。
写真は逆光で赤いレザーが見えにくいが、ドアの下枠を載せる不燃の板を、不燃の飼い木で丁寧に調整する。

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そして、枠付ドアを部屋の中に入れ、取り付け枠の4隅に押さえの木片をスクリュークギで仮止めする。そして、内側から枠付ドアを建て起こす。

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このドア枠には左右の縦枠に4本ずつ固定金物が埋め込んである。
これを付属の6角レンジで内側より捻り出しながら水平調節を行う。
水平・垂直がとれると、固定金物の中へ付属のビスを揉み込む。

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こうして、玄関ドアがとりあえず取り付けられる。
気密工事や防水工事、仕上げ工事はあと。
ウッドサッシの取り付けも基本的にこのドア工事と変わらない。
水切りが付いているかいないかの差。

つまり、サッシやドアの寿命がくれば、いつでも枠に付いている固定金物のビスを外し、6角レンジで固定金物を戻せば、いつでも簡単に枠ごと内側へ外すことが出来る。
そして新しいサッシと取り替えることが出来る。

これに対して、外付けのサッシは、外装仕上げ材をはずさないとサッシが取り替えられない。したがってサッシの取り替え工事は大ごとになる。
そのことを『センチュリー住宅』などと叫んでいる大手プレハブメーカーも言及していない。国土交通省も黙っている。もちろん品確法も。

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ガラスだけの取り替えだったら簡単に出来る。
S邸は大きな嵌め殺し窓、つまりフィックス窓が数ヶ所あった。
したがって、吸盤のついた道具を内と外で駆使し、簡単に装填していた。


ということは、PVCの枠さえ劣化しなかったら、ガラスや建具、シーリング材が劣化しても、いつでも取り替えが可能ということ。

ノックダウンではなく、がっちりと断熱材を充填し、劣化しない枠が開発出来るのか。
ドイツではPVCサッシの比率が50%を超えているという。
しかし、開発されてから時間が浅く、まだ50年程度の実績しか持っていない。
まして温暖地で、高温に曝される日本での、本当の耐用年数は分からない。

50年とか100年の保証を謳っているメーカーは、この点をどう考えているのだろうか。
もっと住宅業界全体で、議論を深める必要があるのではなかろうか。

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2007年08月09日

熱損失 (サッシ3)



現在なら、K値が1.1Wの国産サッシが、比較的手頃な価格で簡単に入手出来る。
しかし、一年前は、そうはゆかなかった。

昨年の5月頃、トステムの潮田健次郎前会長に呼ばれヨーロッパ事情を説明した折に、「是非1.0Wを切るサッシの開発を」とお願いした。若い頃の潮田さんはすぐに反応されたが、トップメーカーになった立場では簡単に反応するわけにはゆかなかったのだろう。
また、S社の前役員の紹介で性能値の高いサッシの開発を企画担当者にお願いしたら「新規に型を起こす考えはない」と簡単に断られてしまった。

当時は、性能の高いサッシというと北欧からの輸入サッシしかなかった。
最高の性能を持っていたのが北洲のサスティナブルの実験棟に採用したスロベニア製のK値が0.68Wと言う信じられない性能。
トリプルのウッドサッシの外側をアルミクラッドし、もう一枚余分にガラスを入れ、しかも枠の外側に断熱層を充填している。
飛びつきたい性能だが、価格も高い。
あくまでも公表価格だが0812のドレーキップで266,000。消費者がこの6掛けで入手できると仮定しても16万円。
そして高さ2.2メートル、幅2.5メートルの一本引きに至っては220万円。6掛けで入手出来ても132万円。車1台が買える。
さすがに、これには手が出なかった。

そこで、スウェーデンからの木製のトリプルガラスで、外側をアルミクラッドのものに絞って調べた。これだと4-12-4-12-4のトリプルで0.9Wという性能値のものもある。
価格もこなれている。
ただし、アルミクラッドは防火認定をとっていない。
郊外の住宅に使うのなら、北欧からの輸入サッシで、K値が1.3Wの性能値だったらいくらでもある。
また、メンテナンスをこまめにやるから外側はウッドのままで良い、ということであれば、若干価格高になるが、準防火地域でも使えるものもある。

そして、面白いことを発見した。
アルミクラッドの外開きでの表示価格が、0912が14.7万円に対して1812が38.8万円。1812を1本使うより0912を2本使った方が29.4%もお値段がお得。
なんでこうなるのか分からないが、開口面積とか風通しということを考えると、大きな窓を1つつけるより、価格のこなれた窓を2つ付ける方が有効。

日本人はやたらと風通しということを言う。
そして、ことのほか引き違いがお好き。
昔の木製建具だったら、全部外して全開に出来た。
全開出来る引き違いは有効開口という面から大変に貴重。
ところが、引き違いサッシは、片方しか開けられない。1612のサッシといえども有効開口面積は0812に過ぎない。
そして、引き違いサッシは泥棒に狙われ易く、耐震性、気密性、水密性でも多くの問題点を抱えている。

つまり、風通しということだけを考えるのなら、PVCで1712の引き違いサッシに13.1万円払うより、0712のドレーキップサッシの7.7万円の方がはるかに有利ということになる。
これからは、単に習慣的、経験的にサッシを選ぶのではなく、耐震性、気密性、防犯性、本当の意味での通風性を考えて選択すべきだと考えさせられた。
つまり、引き違いサッシがなくても、何一つ不自由しないということ。

S邸の設計は途中からマイスターに一任。
同社の気密性能はあまりも良いため、かつてアルミクラッドサッシを使ったら、そぼふる雨の時に、水滴を内側へ引き寄せ、木部が数年で腐り、数百万円をかけて全部のサッシを自社責任で取り替えたという苦い経験を持っている。
このため、輸入の高性能のアルミクラッドサッシの使用に難色を示した。
ウッドサッシのメンテナンスにも責任が持てない。

ということで迷っていた時、カネカがPVCで1.2Wのサッシの開発計画を持ちかけた。
日本板ガラスの真空断熱ガラス・スペーシアを使えば、1.3Wの性能値が得られることは業界では分かっていた。単にスペーシアを使うだけでなく、枠の中に断熱材を充填すれば1.2Wの性能が得られるという見通し。
マイスターはこれに飛びついた。
ところが、残念ながら北総研での実験の結果は、いくつかの数値の中で一番悪かった数値1.28Wという評価しか得られなかった。
だが、一番性能の弱い枠の中に断熱材を充填したトライ意欲は、高く評価したい。

そのほか、準防火地域なので半分以上のサッシにK値が1.98のアミ入りを使わざるを得なかった。
このため、当初予定していた開口部からの熱損失63.7Wが45%も増加して92.25Wにもなってしまった。
28.55Wの増加ということはu当たりに換算すると0.115W。
当初0.78Wと計画していたQ値が0.9Wという数値とならざるを得なかった。

この教訓を、全国のビルダーや消費者の共有財産として活用していただけたらと願っている昨今。
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2007年08月07日

基本的なおさらい (サッシ2)



さて、ここで基本的なおさらいを…。
最近「Q値」とか「熱損失」という意味不明の言葉を聞かれた方も多いと思う。
地球の温暖化を救うために、東京以西で住宅を新築する方は、床面積u当たりの熱損失(Q値)を次世代省エネ基準に従って2.7W以下にしなさい。
これが「地球人としての最低の義務ですよ」という考え。

120uの家だと324W以下。150uの家は405W以下。200uの家は540W以下にしなさい。
「さもないと火をつけますとよ!」という強制力は、残念ながらない。

仮に、貴方の新築計画が150uだったとする。
次世代基準の住宅の場合、平均的な熱損失が405W。
つまり、熱が黙って405Wも逃げている。
一体どこから逃げているか?
年間の全館冷暖房費を22万円とおおまかに仮定すると、下記のごとし。

      熱損失(W)   比率(%)   年額(万円)
窓(開口部)  135     33.3    7.3
外壁      108     26.7    5.9
換気       81     20.0    4.4
天井       41     10.1    2.2
床        27      6.7    1.4
土間       13      3.2    0.7 

つまり、貴方の家で一番の散財息子は窓。20年間で150万円の散財。
次は外壁という長女。20年間で120万円の無駄遣いをして地球に迷惑をかけている。
3番目は換気という次男坊。20年間でこっそり90万円もくすねている。
この窓、外壁、換気の3道楽人で、なんと貴方の家の80%もの熱を浪費している。
これから家を新築しようという方は、この3道楽人を厳しく諫めて行くことが、人類と地球を救うために親として果たさねばならない義務となります。

それでは、開口部で135Wも損失している熱を、どこまで縮小したら良いのか。
次世代省エネ基準はユルフンで、この程度では地球が救われない。
私の個人的な直感では最低の目標が85W。出来ることなら45Wに!

まず、開口部の絶対的な面積を、いろんなアイディアで工夫し、出来るだけ狭くしてゆくことが必要です。
延べ150uの、貴方の新居計画の外壁面積は約190u。
このうちの何%を開口部にするか。
一般的に20%から30%の範囲。
つまり開口部面積が38uから57uというところ。

ここに、日本サッシ協会が唱えるところの高断熱サッシの最高級品2.33Wのペアガラスサッシを採用したとします。
ところが開口部20%だと89W。30%に到っては133W。とても私のいう45Wどころか最低目標の85Wにも達しません。

1日の講演会で、東大の坂本雄三先生は「ドイツのサッシの断熱基準が1.6W、オランダに到っては1.2W。日本のサッシの断熱基準は甘すぎる」と話されました。
もし、オランダ基準の1.2Wのサッシを使えば、開口部20%だと46Wと私のいう目標値に到達します。しかし30%だと最低値はクリアーしますが、68Wと努力不足。

シャープのテレビコマーシャルを見ていると、全面横長のガラスの部屋で吉永小百合が横長の大画面を見ています。
これを素晴らしいと見る建築家がいます。
しかし、私はここから失われる熱を考えると、ゾッとして首筋が寒くなります。
こんな家が、北極熊の生態を脅かしているのだと…。
といって、明るさとか春秋の風通しを無視しろと言っているのではありません。

横長よりも、縦長の窓の方が明るい。そして、防犯を考えてドレーキップサッシを採用すれば、春秋の快い風も入ってくる。
開口部面積を20%に抑えながら、明るくて爽やかで、実用性の高い空間がいくらでも生まれてきています。
なにしろ1.2Wのサッシといえども、優れた外壁の0.2Wという性能に比べると1/6の性能しかありません。冬期は熱がドンドン逃げている…。
そして夏期は、熱射に見舞われる。

こういうバックグランドを前提に、S邸の開口部が計画されました。
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2007年08月06日

充填+外断熱 (サッシ1)


断熱材の種類、気密層の取り方と位置、サッシの種類によって開口部回りの納め方が大きく違ってくる。

S邸の断熱の最大の特徴は、不燃ロックウールによる充填+外断熱を、関東地区では初めて本格採用したことにある。
206の壁に140mmのロックウールを充填し、構造用合板の外側には撥水性のボード状のロックウール60mmを採用。
そして、当初はべバーバリア層を外壁の外側に配して、屋根面も充填+外断熱として、野地板面にべバーバリア層を配して、壁・屋根の気密層を一体化する計画を立てた。

ところが、確認をとった後での断熱仕様の変更。
屋根面までを充填+外断熱にすると、軒の部分の高さが約230mm高くなる。
このため、どうしても北側斜線に引っかかる。
充填+外断熱を強行するには北側の2階の壁を母屋下がりとしなければならない。
これには、施主の同意が得られなかった。
そこで屋根面は当初計画通りウレタンの現場発泡でべバーバリア層をとり、壁のべバーバリアは内側の石膏ボードの下でとることにした。

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採用するサッシは国産のPVC。いわゆる外付け。
このため、外断熱で60mm壁が外側へふける分、サッシも60mm外側へふかさねばならない。
フレーミングが完了した翌日、造作大工さんが入って60mmの厚のランバーでの枠作り作業が忙しく始まる。カッテングなどの段取りは大工さんが行い、現場監督がスクリュークギ止めを手伝う。

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出来た枠の内側に接着剤を付け、開口部を外側にふかしてゆく。

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そして、開口部の内側には短いべバーバリアが4周に張られ、下部には水切りとして長めのルーフイング材が施工される。
これにサッシが取り付けられる。
サッシの取り付け位置は出来るだけ中央。そして間隙が一定でしかも垂直・水平が保たれるように2本のバールで中から抑え、合図があったら外側の大工さんがクギでおおまかに固定する。

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こうしておおまかに固定されたサッシおよびサッシ枠を、もう1人の大工さんが、薄いベニヤの板を内部のクギを打つ位置にかます。
そして、全体の垂直・水平を確かめてスクリュークギで固定する。
それが終われば、飼い木の薄いベニヤをカットして小さなサッシと、大きなサッシ枠の取付けが完了する。

これは一例であって、いろんなパターンがあるということ。
posted by x-unoblog at 05:35| Comment(0) | TrackBack(0) | サッシ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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